アセチレンガス
昨日、天然ガスのバーナーについて
詳報いたしました。
本日は、旧来のバーナー用燃料ガスである「アセチレン」について
高圧ガス保安技術(中級):高圧ガス保安協会 編より抜粋し
解説いたします。
アセチレンガスは、高度経済成長期より日本の産業を影で支えてきた
今でも、無くてはならない産業用ガスです。
鉄を、切ったり(切断)、貼ったり(溶接)、温めたり(加熱)するために
日本全国どこでも、必ずといってよいほど使用されておりますので
ご存知な方も多いと思います。
その反面、取扱に注意が必要で、現代でさえ事故の絶えない
非常に反応性に富んだガスなのです。
「アセチレンガス」 Acetylene . C2H2
アセチレンガスは、三重結合を持つ不飽和炭化水素であり、反応性に
富むガスであるため、有機合成化学の重要な原料として有用されて
まいりましたが、現在では大部分の製品の原料がアセチレンからより
安価なエチレン、プロピレンなどに置き換わり工業的な重要性は低下
しました。しかしながら、溶断、溶接用としては、今なお広く普及しています。
1、性質
無色の気体で純粋なものはエーテルのような香気を有していますが
通常は共存する不純物のために特有の臭気があります。アセチレンは
酸素によって燃焼させると、3000℃を超える温度の火炎をつくることが
できるので、鋼材などの溶断、溶接用に用いられています。
また、アセチレンは元素から生成に際して熱を吸収する吸熱化合物
ですので、炭素と水素とに分解するとき、大量の発熱をする性質を持って
います。このため、圧縮すると激しい発熱を伴って分解爆発を
起こす恐れがあります。
C2H2 → 2C + H2 + 54.2 kcal
このため、アセチレンは圧縮してガスの状態で容器に充填することが
できないので、容器中にケイ酸カルシウムを主成分とし、規定の他孔度を
有する他孔質のマスを詰めて、これにアセチレンをよく溶解する溶剤である
アセトンやジメチルホルムアミド(DMF)を滲み込ませたものに、アセチレン
を吸収、溶解させながら充填してあるのです。
この他孔質物とは、石綿、木炭などによる粒状マスやケイ酸カルシウムの
粒状マスを詰めた容器も流通しています。
アセチレンは銅、銀などの金属とは直接反応して、爆発性のアセチリド
(Cu2C2,Ag2C2)をつくりますので、これらの金属との接触は避けなければ
なりません。
アセチレンは溶断用、溶接用として、工場現場などで使用されていますし
広く普及しておりますので取り扱いには十分な注意をして災害の防止に努める
必要があります。
2、製造法
カルシウムカーバイドに水を注ぐと、アセチレンガスが発生します。
(この方法を利用して、昔は、炭鉱の中でアセチレンの炎を明かり取りにした
ランプが使われていたそうです。)
CaC2 + 2H2O → C2H2 + Ca(OH)2
また、アセチレンは、メタン、ナフサなど石油系炭化水素を高温で
熱分解することによっても得られます。熱分解の反応熱を供給する方法
としては、酸素による燃焼熱、蓄熱炉、アークまたはプラズマなどありますが
通常は燃焼熱を利用して高温(1000〜1500℃)で短時間(0.001〜0.01秒)で
熱分解をして急冷した後、アセトン、DFMなどの溶剤を用いて吸収して
回収します。
3、用途
アセチレンは、酸素アセチレン炎として溶断または溶接用に多く用いられて
います。アセチレンを熱分解して得られる炭素は、アセチレンブラックといい
導電性が良いため乾電池用電極などに利用されています。
また、アセチレンをホルムアルデヒド(HCHO)と反応させるとブチンジオール
となりこれを水素化すると 1,4-ブタンジオール(HOCH2CH2CH2CH2OH)が
得られます。
アセチレンを酢酸に付加すると酢酸ビニル(CH2=CHOCOCH3)が得られます。
以上、アセチレンの解説でした。
皆さんいかがでしょうか?
実は、私自身ガス製造の免許を取得して以来教科書を読み直しながら
加筆しましたが、「改めて、とても勉強になるなあ」と実感しております。
川口液化ケミカル株式会社
高圧ガス、低温機器、真空機器
TEL 048-282-3665
E-mail : info@klchem.co.jp
今日の格言
人生とはなにか?
「はるかなる山々は近づきやすく、登りやすそうに見える。
高峰はさし招くが、近づくにつれて険しさが姿を現してくる。
登れば登るほど旅は苦しさを加え、頂上は雲の彼方に
隠れてしまう。でも登山は骨を折るに値するものであり
独自の喜びや満足感を与える。
おそらく人生に価値を与えるものは、その終局的な
結果ではなくして、闘争の過程であろう。」
(ルソー)